
去年の秋口、実家の母が救急搬送された時、私は病院の待合室で途方に暮れていた。
意識はあるんだけど、入院手続きに必要な保険証の場所を母が思い出せなくて。「多分、スマホのメモに書いてあるから」って言うんだけど、そのスマホのパスワードが分からない。顔認証は本人じゃないと無理だし、数字の組み合わせなんて家族でも知るわけがなくて。結局、弟が実家まで車を飛ばして家中を探し回る羽目になった。深夜3時過ぎ。あの時の無力感ったらなかった。
母は70代で一人暮らし。父が亡くなってから5年、元気にやってるって聞いてたから油断してた。週に一度は電話してたし、月に二回くらいは顔を見せに行ってた。それで十分だと思ってた。でも、いざって時に何も分からないんだよね。銀行口座がいくつあるのか、ネットバンキングのIDは何なのか、サブスクで何に課金してるのか。全部、母の頭の中とスマホの中だけ。
ちなみに私、去年まで「パスワード管理アプリ使ってるから大丈夫」って豪語してたんだけど、そのマスターパスワードを妻に教えてなかったことに気づいて冷や汗かいた。いや、教えるタイミングなくない? 普通に生活してたら「ねえ聞いて、僕が死んだ時のためにパスワード教えるね」なんて会話、出てこないでしょ。
単身赴任中の同僚が言ってたんだけど、彼は月曜の朝と金曜の夜に必ず奥さんとビデオ通話するルールにしてるらしい。最初は「愛妻家かよ」って冷やかしてたんだけど、理由を聞いて納得した。「俺が孤独死してたら、週末まで気づかれないかもしれないから」って。笑えない。実際、一人で暮らしてると、倒れても誰も気づかない可能性がある。彼の会社、リモートワークも多いから、出社しなくても怪しまれないこともあるらしい。
で、母の件があってから、私も真剣に考え始めた。安否確認と情報の継承。この二つ、セットで考えないと意味がないんだよね。生きてるか確認できても、その人が管理してる情報にアクセスできなかったら、結局困る。逆に、情報だけ残しても、いつ見ればいいのか分からなかったら宝の持ち腐れ。
最近知ったサービスで「人生金庫」っていうのがあって、これが結構理にかなってる。定期的に安否確認のメールが来て、反応しないと登録した家族に通知が行く仕組み。同時に、パスワードとか口座情報とか、「万が一の時に家族に伝えたい情報」を暗号化して保管しておける。生きてる間は誰も見られないけど、本人が反応しなくなったら、指定した人だけがアクセスできるようになる。
私の友人で、父親が急逝した時に遺品整理で地獄を見た奴がいる。部屋から出てきたメモ帳が20冊以上。どれも中途半端に書いてあって、どれが最新の情報か分からない。しかも、ネット証券の口座があることは分かったんだけど、ログイン情報が見つからなくて。サポートに電話しても、本人確認できないから教えられないって言われて。結局、弁護士に頼んで、何ヶ月もかけてようやくアクセスできたらしい。その間の精神的な疲労とか、費用とか、考えたくもない。
情報って、今の時代、ほとんどがデジタルなんだよね。銀行もネット、証券もネット、保険の契約内容もWebで確認、公共料金の支払いもアプリ。便利になった分、全部にパスワードが必要で、しかも「使い回すな」って言われる。真面目に全部違うパスワード設定したら、覚えられるわけがない。
母は今、退院して元気にしてるけど、あの一件以来、私とスプレッドシートで情報を共有するようになった。でも、正直これも完璧じゃない。Googleアカウントのパスワード忘れたら終わりだし、スプレッドシート自体のURLを私が忘れたら意味ない。それに、母がどこまで更新してるのか、私には分からない。
安否確認も、今は週一の電話でやってるけど、これも曖昧。私が忙しくて電話できない週もあるし、母が旅行に行ってて出ない時もある。「連絡ないけど大丈夫かな」って不安になる時と、「まあ大丈夫でしょ」って楽観視する時の境界線が、すごく曖昧。
単身赴任の人とか、もっと切実だと思う。平日は仕事で忙しいし、週末は疲れて寝てるだけかもしれない。家族は「連絡ないけど忙しいんだろう」って思ってる。でも、実は倒れてるかもしれない。そういう「かもしれない」の不安って、意外とボディブローみたいに効いてくる。
私が一番怖いのは、自分が突然いなくなった時、妻が路頭に迷うこと。生命保険の証券番号、ネット銀行の口座、クレジットカードの引き落とし先、サブスクの契約状況。全部、私の頭の中とスマホの中。妻には「大体このへん」くらいしか伝えてない。これ、完全にアウトでしょ。
情報を残すことと、それを適切なタイミングで渡すこと。この二つを両立させるのって、想像以上に難しい。ノートに書いても、そのノートの存在を忘れられたら終わり。クラウドに保存しても、アクセス方法を共有してなかったら意味ない。かといって、全部オープンにするのも気持ち悪い。
結局、何が言いたいかっていうと、私たちは思ってる以上に脆弱なんだよね。情報も、命も。そして、その二つは密接に繋がってる。
参考までに、こういうサービスもあるみたい。私もまだ完璧に使いこなせてないけど。
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