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目が覚めたとき、カーテンの隙間から差し込む光が、畳の上にうすく伸びていた。9月の朝はまだ少しだけ涼しくて、窓を開けると金木犀のような、でも少し違う、どこか懐かしい草の匂いがした。火曜日だ、と思った瞬間、頭の中に今週のタスクがぶわっと浮かんでくる。資料の修正、連絡待ちの返信、後回しにしていた書類。全部が同時に目の前に並んで、なんとなく息が浅くなった。

こういうとき、僕はよくコーヒーを淹れる。豆を挽く音が好きで、あの低くざらついた音を聞いていると、少しだけ頭が静かになる気がする。今日は「MORIWAKI BLEND」という近所の小さな焙煎屋の豆を使った。苦みの中にほんのり甘みがあって、朝にちょうどいい。カップを両手で包むと、じんわりと温かさが伝わってくる。それだけで、少し落ち着いた。

子どもの頃、夏休みの宿題を前にして固まっていた記憶がある。絵日記、読書感想文、自由研究。どれから手をつければいいかわからなくて、結局ぼーっとしたまま時間だけが過ぎていた。あの感覚と、今の火曜日の朝はどこか似ている。やることが多いと、人はなぜか動けなくなる。

でも最近、気づいたことがある。気持ちの整理というのは、「全部を把握しようとすること」じゃないかもしれない。むしろ、今日のために「ひとつだけ選ぶ」ことで、頭の中の霧が少しずつ晴れていく。

だから今日は、まず一通のメールだけ返すことにした。それだけでいい。それが今日の「ひとつ」だと決めると、なぜか他のことも少しだけ軽くなった。不思議なものだ。

コーヒーを飲み終えて、ノートを開いた。今日やることを書こうとして、ペンのキャップを外したまましばらく止まっていた。気づいたら5分くらい経っていて、自分でも少し笑えた。整理しようとして、整理できていない。まあ、それでもいい。

心の余裕というのは、何もかもを完璧にこなした先にあるものじゃないと思う。「今日はこれだけ」と決めて、その一つに集中できたとき、ふと肩の力が抜ける感覚がある。それが、僕にとっての余裕のかたちだ。

ひとつずつ進めばいい。全部を今日終わらせなくてもいい。目の前にある一つのことに、静かに向き合う。それだけで、今日は十分に動き出せる。

窓の外で、自転車が一台ゆっくり通り過ぎた。秋の朝の光が、少しずつ部屋の奥まで届いてきていた。
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こういう時間は、特別なものではなく、
ほんの少し意識するだけで日常の中に生まれるのかもしれません。

忙しさの中で見落としていたものに気づくと、
時間の流れは少しだけやさしくなる気がします。

もし、こうした“静かな余韻”に少しでも価値を感じるなら、
ぜひ武岡出版の作品もご覧ください。