RYU TAKEOCA BLOG
武岡 隆のブログ
本、活字、日本語、物語、記憶、時間。
日々の中でふと立ち止まったことを、武岡 隆の言葉で静かに綴ります。
彼岸花が咲くころ、葉はまだ見えない
彼岸花が咲いている姿には、花を支える茎はあっても、葉が見当たらない。一本の花茎が地面から伸び、その先に花が集まっている。花の色や形より先に、私はその足元の簡素さが気になる。
多くの草花は、葉の間から茎を伸ばして花を咲かせる。葉と花が同じ時期に見えているため、一株の全体を眺めているように感じやすい。彼岸花には、その見慣れた組み合わせがない。
花だけを見れば華やかだが、植物の姿として見ると、主要な部分が一つ抜けている。実際に葉がないわけではない。彼岸花は地中の球根に蓄えた養分を使い、秋に花茎を伸ばす。
花が終わるころになると、今度は細長い葉が出てくる。その葉は冬を越し、光合成によって球根へ養分を蓄え、春になると枯れていく。そして地上から葉がなくなったあと、次の開花期を迎える。
葉が先にあり、その中から花が現れる植物なら、咲く前から一株の所在が分かる。彼岸花の花茎は、地上に何も見えない期間を挟んで直接立ち上がる。冬に見える細長い葉と秋の花を別々に目にしても、両者を同じ株だと示す姿は地上に残らない。
そのため花は、前からそこにあった株の続きというより、その時期に急に現れたもののように見える。
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