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土曜日の朝、6時43分。

カーテンの隙間から差し込む光が、フローリングの上に細長い白を引いていた。まだ外は静かで、遠くで鳥が鳴いている。こういう朝にだけ、なぜか自分の人生のことを考えてしまう。

コーヒーを淹れながら、ふとした動作の中で気づいたことがある。豆を量るとき、いつも少し多めに入れてしまうのだ。濃いほうが好きだから。これも、選択だ。誰かに言われたわけでもなく、いつからかそう決めていた。

人生を振り返ったとき、大きな決断ばかりが目に入りがちだ。就職先、住む場所、付き合う人。でも実際には、そのあいだに無数の小さな選択が積み重なっている。朝に何を読むか。誰の言葉を信じるか。どの感情を手放して、どれを抱えておくか。

小学生のころ、図工の時間に使う絵の具の色を選ぶのが好きだった。「ビリジアン」という名前の深い緑がお気に入りで、使いすぎて先に無くなった。あの選択に理由はなかった。ただ、好きだった。それだけだ。

内省というと、どこか重い響きがある。でも実際は、コーヒーが落ちる音を聞きながら「最近の自分はどうだろう」と静かに問うだけでいい。

ミストラルという北欧系のインテリアブランドのマグカップで、今朝も飲んでいる。少し厚みがあって、手のひらに伝わる温かさがちょうどいい。買ったのは去年の秋、一人で入ったセレクトショップで、特に目的もなく手に取った。あの日の選択が、今日の朝の感触をつくっている。

29歳という年齢は、人生の中でどのくらいの位置にあるのか。まだ序盤だとも言えるし、すでに相当な積み重ねがあるとも言える。どちらが正しいかより、今どこに立っているかを確認するほうが意味があると思っている。

選択に「正解」を求めると、視野が狭くなる。むしろ問うべきは、「この選択は自分の軸に沿っているか」だ。他人の基準に引っ張られていないか。流れに乗っているだけではないか。そこを確認する習慣が、内省の本質だと今は思っている。

窓の外、朝の光が少し強くなってきた。カップの底に残った最後の一口を飲み干して、今日という一日をどう過ごすか、ほんの少しだけ考える。

大きな決断は、案外そう何度も来ない。でも小さな選択は、今日も明日も、ずっと続く。だとすれば、その一つひとつに少しだけ意識を向けることが、人生の方向を静かに変えていくのかもしれない。
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こういう時間は、特別なものではなく、
ほんの少し意識するだけで日常の中に生まれるのかもしれません。

忙しさの中で見落としていたものに気づくと、
時間の流れは少しだけやさしくなる気がします。

もし、こうした“静かな余韻”に少しでも価値を感じるなら、
ぜひ武岡出版の作品もご覧ください。