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カーテンの隙間から、うっすらと夏の光が差し込んでいた。

時刻は9時を少し過ぎたくらい。アラームも鳴らない、誰かに急かされることもない。ただ、静かな朝がそこにあった。こういう感覚、久しぶりだと思った。

平日はずっと、どこかで気を張っていた気がする。メールの返信、会議の準備、終わらないタスク。身体よりも先に、頭の中が疲れていくような日々だった。だから、この何も決まっていない休日の朝は、少し戸惑うくらい静かで、それがかえって心地よかった。

ベッドから出て、まずコーヒーを淹れた。豆は近所の焙煎所「ハルノカ珈琲」のもの。浅煎りで、柑橘系のほのかな酸味がある。お湯を細く注ぐと、粉がふっくらと膨らんで、部屋中にやわらかい香りが広がっていく。その香りを吸い込んだとき、ようやく「今日は休みなんだ」と体が気づいたような気がした。

朝食は、少し遅めにとった。トーストを焼いて、アボカドをざっくり潰して乗せる。レモンを絞ろうとして、思い切り種を落としてしまったけれど——まあ、いい。今日は急がなくていい日だから。

食べ終えたあと、ふと本棚から一冊を取り出した。子どもの頃、祖父の家の縁側で読んでいた短編集に似た装丁の本だった。あの頃は、時間の感覚がもっとゆるやかだった。縁側の木の温かさ、蝉の声、麦茶の冷たさ。大人になってから、あの「何もしていない時間」がどれだけ贅沢だったか、ようやくわかってきた気がする。

読書に飽きたら、散歩に出た。特に目的はない。近くの川沿いを、ただ歩く。夏の朝の空気は、まだ少し湿っていて、草の匂いが混じっていた。川面がきらきらして、遠くで子どもが自転車を走らせている。そういう何でもない景色が、なぜか心に染みる。

帰ってきてから、部屋を少し整えた。気分転換には、空間を整えることが一番効く、と最近気づいた。雑誌を棚に戻して、テーブルを拭いて、窓を少し開ける。風が入ってきて、カーテンがゆっくりと揺れた。それだけで、部屋がちゃんと「自分の場所」に戻ってくる感じがした。

自分の時間って、何か特別なことをしなくても作れる。コーヒーを丁寧に淹れる時間でも、川沿いを歩く時間でも、本のページをめくる時間でも。どれが正解とか、どれが一番いいとか、そういうことじゃないんだと思う。

今日は、自分が「これでいい」と思える時間を、ただ選んでいけばいい。それだけで、この休日の朝はもう十分だと、僕は思っている。
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こういう時間は、特別なものではなく、
ほんの少し意識するだけで日常の中に生まれるのかもしれません。

忙しさの中で見落としていたものに気づくと、
時間の流れは少しだけやさしくなる気がします。

もし、こうした“静かな余韻”に少しでも価値を感じるなら、
ぜひ武岡出版の作品もご覧ください。