
カーテンの隙間から、白っぽい夏の光が差し込んでくる。まだ七時前なのに、外はもう十分に明るい。
今日は木曜日だ。
週の後半、という言葉が頭の中でゆっくり転がった。月曜に立てた予定のうち、どれだけ形になっただろう。手帳を開くと、消し込んだ項目と、そのままになっている項目が半々くらいで並んでいる。それを見て、少しため息をついた。でも、それだけだ。責めるほどのことじゃない。
僕には、こういうとき思い出す場所がある。小学生のころ、父の書斎に忍び込んでは、棚に並んだ本の背表紙を順番に指でなぞっていた。読むわけでもなく、ただ触れていた。あの感覚に似ている。予定を眺めるとき、何かを決めようとするんじゃなくて、ただそこに在るものを確認する、みたいな時間。
木曜の朝にやることは、たったひとつでいい。
今日、本当にやるべきことを一個だけ選ぶ。それだけで、週の後半の景色がすこし変わる。全部を片付けようとしなくていい。ペース調整というのは、速度を上げることじゃなくて、歩幅を自分に合わせ直すことだと思っている。
デスクの上には、昨晩買ってきた「カルドラ・ブレンド」のコーヒーがある。浅煎りで、ほんのり柑橘系の香りがする。カップを両手で包むと、じんわりと温かさが伝わってきた。窓の外では、蝉がまだ鳴いている。夏の盛り、という感じ。
こういう朝に、手帳の余白に走り書きをする。「今日だけ、これだけ」と。
小さな見直しをするのに、特別な道具はいらない。ペンと、五分の時間と、少しだけ正直になる気持ち。昨日できなかったことを今日に引き継ぐのか、それとも一度手放して別の優先順位に組み替えるのか。どちらが正解かは、その日の自分にしかわからない。
ちなみに今朝、僕はコーヒーを飲みながら手帳を開こうとして、うっかり付箋を三枚まとめてぐちゃっとくっつけてしまった。剥がそうとしたらビリッとなって、なんとも言えない気持ちになった。でも、それくらいでちょうどいい。完璧な朝じゃなくて、こういう少しだけ間の抜けた朝のほうが、なぜかちゃんと動ける気がする。
週の後半は、まだある。今日と、明日と。
焦らなくていい。少し調整すれば、ちゃんと前に進める。今日必要なことを、ひとつだけ。それだけで十分だと、この朝の光の中で、静かにそう思っている。
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こういう時間は、特別なものではなく、
ほんの少し意識するだけで日常の中に生まれるのかもしれません。
忙しさの中で見落としていたものに気づくと、
時間の流れは少しだけやさしくなる気がします。
もし、こうした“静かな余韻”に少しでも価値を感じるなら、
ぜひ武岡出版の作品もご覧ください。






