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コーヒーを淹れながら、ふと気がついた。マグカップを手に取ったとき、いつもより少しだけ重く感じた。疲れているのかもしれない。あるいは、ただ単に昨夜の眠りが浅かっただけかもしれない。どちらにしても、今日は木曜日だ。

週の後半に差し掛かった朝というのは、不思議な時間帯だと思う。月曜日の緊張感はもうなくて、かといって金曜日の解放感にはまだ届かない。そのあいだのどこかに、ぽつんと木曜日は存在している。

窓の外では、8月の朝日がすでに容赦なく照りはじめていた。セミの声が低く重なりあって、空気ごとまとわりついてくるような熱さ。それでも、淹れたてのコーヒーから立ちのぼる香りだけは、どこか涼しいところにいるような気持ちにさせてくれる。僕はそれをゆっくり吸い込んで、ひとつ息をついた。

今週の初めに立てた予定を、頭の中で静かに並べ直してみる。全部こなせているか、というと正直なところ少し怪しい。火曜日に先送りにしたあの件、水曜日に思ったより時間がかかった作業。気づけば、手帳の余白はじわじわと埋まっていた。こういうとき、つい「もっとうまくやれたはずだ」と思ってしまう。でも、それは少し違うと最近は感じている。

大事なのは、ここで小さな見直しをすることだ。全部を今日中に片付けようとしなくていい。予定を眺めて、「今日、これだけは」と一つ決める。それだけで、不思議と気持ちが落ち着いてくる。

子どものころ、夏休みの宿題を前に固まっていた自分を思い出す。全部を一気に終わらせようとして、結局何も手につかない。あのときも、母に「まず一枚だけやってみな」と言われて、ようやく鉛筆を動かせた。今でもやっていることは、あのころとそんなに変わっていないかもしれない。少し恥ずかしくもあり、でも少しほっとする記憶だ。

ペース調整というのは、サボることじゃない。自分の歩幅を確認して、残りの道のりに合わせて足を置き直すことだ。架空のライフスタイルブランド「Moreaux(モロー)」が掲げているコンセプトに、「整えることは、前に進むことだ」という言葉がある。そのままだと思った。

今日、僕がやることは一つに絞った。それ以外は、明日以降に丁寧に回す。手帳を開いて、優先することに小さく丸をつけた。たったそれだけの動作なのに、なんだかすっきりした気分になる。

週の後半を、焦って駆け抜けなくていい。ここまで来た自分を、もう少しだけ信頼してみてほしい。今日の一歩が、ちゃんと金曜日につながっている。コーヒーをもう一口。今日もよろしく、と自分に言う。
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こういう時間は、特別なものではなく、
ほんの少し意識するだけで日常の中に生まれるのかもしれません。

忙しさの中で見落としていたものに気づくと、
時間の流れは少しだけやさしくなる気がします。

もし、こうした“静かな余韻”に少しでも価値を感じるなら、
ぜひ武岡出版の作品もご覧ください。