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武岡 隆のブログ

RYU TAKEOCA BLOG

武岡 隆のブログ

本、活字、日本語、物語、記憶、時間。
日々の中でふと立ち止まったことを、武岡 隆の言葉で静かに綴ります。

題名を頼むと、本文の迷いが見えてくる

AIに題名を頼むと、候補が一列に並ばないことがある。言い回しが違うという程度ではない。一つは出来事を題名にし、別の一つは書き手の感情を拾い、もう一つは末尾に出てきた考えを主役にしている。

まるで、それぞれ別の文章を読んだようなばらつき方である。こういうとき、つい候補の出来を比べたくなる。どれが分かりやすいか。

どれが目を引くか。本文にふさわしい語調はどれか。題名を決める作業なのだから、それ自体は間違っていない。

ただ、候補同士の距離があまりに遠い場合、題名だけを見比べても決めにくい。どれか一つが明らかに悪いのではなく、どの候補にも本文の一部を言い当てているところがあるからだ。

そこで気になるのは、AIの選び方より、頼む前の文章である。文章には、書き始めたときの中心と、書いている途中で見つかった中心が同時に残ることがある。

冒頭ではある出来事を扱い、中ほどではそこから生じた疑問を考え、終わり近くでは別の発見に力が入る。書いている本人には一続きに見えていても、題名を一つ付けようとすると、三つのうち誰を表に出すのかが決まっていない。

AIは、その決まっていなさを整えてはくれないことがある。むしろ、本文の各所から目立つものを拾い、それぞれを題名らしい形にして返す。その結果、原稿の中で並存していた中心が、候補欄では離れて見える。

ここで、指示を細かくすれば候補は揃えられる。「冒頭の出来事を中心に」「感情を表す語は避けて」「結論が伝わる題名に」と範囲を狭めれば、見た目のばらつきは減るだろう。

しかし、それで本文の迷いまで消えたとは限らない。候補を整える指示が、原稿の割れ目を覆っただけかもしれない。反対に、候補が多様だからといって、いつも本文に問題があるわけでもない。

同じ中心を、具体的に言うか、少し引いて言うか。その違いなら、選択肢の幅として受け取れる。確かめたいのは表現の幅ではなく、候補ごとに「何についての文章か」が変わっていないかである。

たとえば、ある候補を選ぶと冒頭が前置きに見え、別の候補を選ぶと後半が脱線に見えるとしたら、題名の選択だけでは済まない。どちらを採っても本文の大きな部分が脇へ押し出されるからだ。

そこで初めて、残したい段落の多さではなく、何を考えるためにこの文章を書いたのかを見直す必要が出てくる。面白いのは、採用しない候補の方が役に立つ場合である。

その題名が本文の脇道を正確に言い表しているなら、AIが読み違えたと片づけにくい。脇道のはずの部分に、題名になるほどの重さを与えたのは本文だからである。

題名は、文章を短く飾るための札ではない。本文のどこに重心があるかを、一行だけで引き受ける。その一行を複数出してもらったとき、互いに違う方向を向くなら、候補の順位を決める前に原稿へ戻る理由がある。

そのとき見るべきなのは、最も気の利いた一案ではない。どの候補も捨てにくくしている本文の段落である。

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