RYU TAKEOCA BLOG
武岡 隆のブログ
本、活字、日本語、物語、記憶、時間。
日々の中でふと立ち止まったことを、武岡 隆の言葉で静かに綴ります。
首振り扇風機がこちらを外れる数秒
首振り扇風機は、こちらへ風を送った直後に、こちらを外れていく。正面を向いている時間は短い。涼しいと感じたところで向きが変わり、風は横へずれていく。
羽根は同じように回り続けているのに、こちらには届かない。この数秒を、私は少し妙な待ち時間だと思う。風が必要なら、扇風機をこちらへ向けたまま固定すればよい。
そうすれば、待つ必要はない。首振り機能は、その連続を自分から断ち切る仕組みである。涼しくするための道具に、涼しくない時間をわざわざ挟んでいる。
もちろん、それは機能の不足ではない。向きを変えるのは、一方向だけに風を当て続けないためだ。人が複数いる場面なら、それぞれの方角を順に通ることにもなる。
一人で使う場合にも、同じ場所へ当たり続ける状態を避けられる。首振りを選んだ時点で、風が外れる時間も動作の内側に入っている。それでも、風が来ている最中より、外れたあとに扇風機の動きを強く意識することがある。
届いている間は、風を受け取るだけで済む。届かなくなると、扇風機がいまどちらを向いているのか、いつ戻るのかが気になり始める。送風されていない数秒のほうが、首振りという動作をよく見せるのである。
「首振り」という名も、機械の側から付けられている。扇風機の頭部が左右へ動く。その説明としては正確だが、受け手の側では、風が来る、離れる、また来るという繰り返しになる。
同じ機能を見ていても、機械には往復運動であり、こちらには到着と不在である。固定した扇風機の風には、次を待つ感覚がほとんどない。強さが一定なら、受け取り方も続いていく。
首振りにすると、一回ごとの風に始まりと終わりができる。戻ってくることが分かっているから、外れた数秒も停止とは感じにくい。故障して止まったのとは違い、来ないことに予定がある。
ここが面白い。待ち時間というと、何かが遅れている状態を考えやすい。ところが首振り扇風機の場合、待ち時間は正しく動いているから生まれる。
もっと早く戻ればよいとも限らない。往復の幅を狭めれば不在は短くなるが、風を分ける範囲も小さくなる。待たなくて済むようにすれば、首を振る意味まで薄くなる。
やがて扇風機はこちらへ戻る。正面に近づくにつれて風が触れ始め、最もよく届く位置を通る。そして、戻ってきた風はそこで止まらず、そのまま反対側へ抜けていく。
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