RYU TAKEOCA BLOG
武岡 隆のブログ
本、活字、日本語、物語、記憶、時間。
日々の中でふと立ち止まったことを、武岡 隆の言葉で静かに綴ります。
草稿を一文手前で止め、AIに続きを予測させる
草稿から次の一文だけを隠し、その手前までをAIに読ませる。そこで「続きを書いて」と頼むのではなく、「次に来そうな一文を複数挙げてほしい」と頼む。
このわずかな違いが気になる。続きを作らせるなら、AIは共同執筆者になる。予測させるなら、いまある文章がどちらを向いているかを見る材料になる。
比べたいのは、AIが正解したかどうかではない。そもそも作者がすでに書いた一文を当てることに、正解という言い方は似合わない。確かめたいのは、隠した一文へ至る手がかりが、その直前までにどれほど置かれていたかである。
一つではなく複数を出させるのも、そのためだ。答えが一つだけでは、AIが偶然選んだ展開なのか、草稿が強く求めている展開なのかを分けにくい。三つほど並べると、別々の案に見えても共通する方向が現れることがある。
返事をする案ばかりなのか、人物を動かす案が多いのか、まだ説明が続くと読まれているのか。その重なりを見る。たとえば場面が「彼女は予定表を閉じ、『明日も来るの』と尋ねた。
」で止まっているとする。AIの予測がどれも相手の返答なら、この問いは返事を待つ形で読まれている。一方、実際の草稿では窓の外へ視点が移っていたとしたら、作者は問いを残したまま別のものを見せようとしている。
そのずれは失敗とは限らない。返答を期待させてから外す構成かもしれないからだ。反対に、外したつもりがないのに予測が一方向へ揃う場合もある。
作者は次に人物が立ち上がる場面を書いたのに、予測には説明や回想ばかりが並ぶ。そうであれば、直前の文までに動作へ移る準備が足りない可能性がある。
見直す場所は隠した一文そのものではなく、その一つ前、二つ前にある。実際の展開と予測がよく似ていた場合も、判断は一つではない。伏線が届いているとも言えるし、先が見えすぎているとも言える。
ここでは一致率より、作者がその展開を待たせたかったかどうかが大事になる。待たせたかったなら一致は働いている。驚かせたかったなら、予測に並んだ根拠を草稿から探す必要がある。
AIの予測を読者全体の反応として扱うことはできない。出力は使うモデルや指示の仕方にも左右される。そこで同じ条件のまま予測を取り直し、繰り返し現れる候補や根拠があるかを見る。
一回だけの並びより、重なった部分のほうが、草稿が作る期待の方向を考える手がかりになる。また、「異なる案を出して」と強く求めれば、起こりそうな順ではなく、違いを作るための案が混じる。
私は、似た予測を無理に散らさず、自然に続く候補と、その根拠になった箇所を挙げさせる形がよいと思う。根拠を尋ねると、「質問で終わっているから返答を予想した」「人物の手が止まったため次の動作を待った」といった読み方が示される。
採用すべき説明とは限らないが、草稿のどの部分が次の方向を決めているかは見つけやすくなる。AIが作った続きより、引用された原文のほうを見る。この方法で面白いのは、隠していた一文を戻したあとである。
予測と違っていた箇所に印を付けると、直したくなるのはその一文とは限らない。続きが突然現れたように見えるなら、足りなかったものはたいてい手前にある。
草稿を一文手前で止めたはずなのに、最後に目が留まるのは、さらにその前の一文なのである。
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