RYU TAKEOCA BLOG
武岡 隆のブログ
本、活字、日本語、物語、記憶、時間。
日々の中でふと立ち止まったことを、武岡 隆の言葉で静かに綴ります。
AIが物語に置いた、頼んでいない窓
AIが物語の続きを補った文章に、こちらが頼んでいない窓が置かれていることがある。窓辺に立つ。窓から光が差す。
窓の外へ目を向ける。そうした一文は、物語の中に入りやすい。情景が見え、人物にも動作を与えられるため、続きを作る側には都合がよいのだろう。
私が気になるのは、その窓が余分な飾りでは済まないことである。窓があるなら、そこには壁がある。室内と屋外が分かれ、人物から見える範囲も決まる。
光が差すと書けば、窓と人物との位置関係が生まれる。人物が窓へ近づくなら、そのあいだを歩けるだけの広さも要る。窓は一語で置けるが、一語だけでは置いておけない。
机の上にコップが加わった場合も、周囲との関係は増える。ただ、コップは別の場所へ移せるし、不要なら片づけられる。窓は建物の一部である。
あとから都合が悪くなっても、文章の中で気軽に持ち上げるわけにはいかない。しかも、窓は人物の視線を引き寄せる。部屋の中だけで進んでいた場面に外ができる。
見られるものが増えるだけではない。人物が外を見るのか、見ないのかという選択まで発生する。窓に背を向けて話す人物と、話の途中で外を見る人物では、同じ台詞でも受け取られ方が違ってくる。
ここで窓を採用するかどうかは、「窓から光が差していた」という一文の出来だけでは決められない。その先で人物をどこに立たせるのか。光は場面の途中でどう扱われるのか。
外に見えるものを物語へ入れるのか。窓を残した瞬間、まだ書かれていない部分にも条件が渡される。反対に、AIが加えた窓を削れば元へ戻るとも限らない。
窓のそばへ動いた人物、外へ向いた視線、室内へ入った光が後続の文章に残っていれば、それらも一緒に直す必要がある。消す作業にも、窓がどこまで物語を変えたかを確かめる手間が生じる。
生成された細部を選ぶというと、言い回しの中から気に入ったものを拾う作業のように聞こえる。実際には、物を一つ残すたび、その物が要求する広さや向きまで原稿へ入ってくる。
形容詞なら削って済む箇所でも、具体物は周りの文を従わせることがある。AIの提案が悪いという話ではない。頼んでいなかった窓によって、場面が動き始めることもある。
ただし、その動きを面白いと思って残すなら、窓だけを借りることはできない。私はまず、それがどの壁にある窓なのかを決めることになる。
新しい記事をメールで受け取る
武岡 隆の新しい文章が公開されたとき、メールで静かにお知らせします。
登録料・購読料はかかりません。メールアドレスはブログ更新通知のためだけに使用します。いつでも解除できます。


