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武岡 隆のブログ

RYU TAKEOCA BLOG

武岡 隆のブログ

本、活字、日本語、物語、記憶、時間。
日々の中でふと立ち止まったことを、武岡 隆の言葉で静かに綴ります。

AIの要約に残らなかった人物

物語の草稿をAIに要約させると、原文には確かにいた人物の名前が、要約から消えることがある。出来事の順序はおおむね合っている。主人公の目的も結末も外していない。

それなのに、その人物だけがいない。私は、この抜け方が気になる。要約に残らなかったからといって、その人物が不要だと決まったわけではない。

要約は作品の採点表ではなく、限られた長さの中で筋道を組み直した文章である。そこでは、何が優れているかよりも、何を残せば話の全体を短く説明できるかが優先されやすい。

たとえば、ある人物の行動によって主人公が決断したとしても、要約では「主人公は決断する」とだけ書ける。結果は保たれるが、決断を生んだ相手は消える。

原文では人物同士の関係として書かれていた箇所が、要約では主人公一人の動きに置き換わるのである。人物だけでなく、出来事にも同じことが起きる。物語の進行を直接変えない場面は、前後の出来事へ吸収されやすい。

そこで交わされた言葉や、その場面を経たからこそ生じる読み心地は、筋だけを追う文章には入りにくい。省かれた部分が弱いのではなく、短い要約の中では役割を示しにくいのである。

一方で、要約に何度も残る人物や出来事もある。登場する回数が多いとは限らない。物語の目的、対立、転換、結末をつなぐ位置にいると、短くしても外しにくい。

AIの要約を原文と並べると、作品のどの線が「これを抜くと話が通らない線」として見えているのかが分かる。ここで注意したいのは、その線をそのまま作品の重心と決めないことである。

物語には、筋を成立させる重さと、読んだ時間を形づくる重さがある。前者は要約に現れやすい。後者は、人物のためらい、関係の微妙な変化、すぐには結果へ結びつかない場面に宿ることがあり、短い説明からはこぼれやすい。

同じ草稿でも、指定する要約の長さや条件が変われば、残る情報も変わる。筋だけを求めれば人物関係は圧縮されやすく、人物の役割も含めるよう求めれば、最初の要約で消えた名前が戻ることもある。

その違いは、人物の価値が変動したことを意味しない。どの情報を優先する条件だったかが変わったのである。一度の出力を固定的な判定にせず、要約の条件も含めて読む必要がある。

だから私は、要約文だけを読んで草稿を直すより、まず原文のどこが別の言葉に置き換えられたかを見る。名前のある人物が「周囲の人々」になっていないか。

誰かの働きかけが、主人公自身の判断として処理されていないか。二つの出来事が一つの因果関係にまとめられていないか。単なる省略に見える箇所にも、AIが読んだ筋道が出ている。

名前が消えたことと、その人物の働きまで消えたことも分けて考えたい。名前はなくても「助言を受けて決断した」と残っているなら、関係は圧縮されても働きは保たれている。

助言そのものがなくなり、主人公が一人で決断した形になっているなら、原文にあった因果関係まで変わっている。この差は、文字数の都合だけでは見えない。

もちろん、残らなかった人物をすべて目立たせる必要はない。筋の外側にいることが、その人物の役割である場合もある。主題を正面から担わず、主人公の見え方だけを少し変える人物まで、要約に入るよう書き直せば、かえって原文の配分を崩してしまう。

反対に、作者として物語の中心に置いたつもりの人物が、名前だけでなく働きまで消えているなら、一度立ち止まる価値はある。その人物の重要さが場面の数だけで示され、主人公の選択や物語の変化には結びついていない可能性があるからだ。

そこで初めて、原文側の書き方を確かめる理由が生まれる。

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